熊本地震で車中泊を余儀なくされている人たちの間で、エコノミークラス症候群による死者が続出しています。
事態の深刻さを重く見てか、官房長官までエコノミークラス症候群の対策が急務であると、記者会見で発表しました。
車中泊はしないに越したことはありません。しかし地震という非常事態で、車中泊をせざるを得ない人たちがたくさんいるのも事実です。
そもそもエコノミークラス症候群というのは、もともとは飛行機において、一番窮屈な座席であるエコノミークラスにおいてよく見られる症状でした。
今回の熊本地震において、車中泊によってエコノミークラス症候群になった人たちは、その症状はエコノミークラス症候群とはいえ、飛行機のエコノミークラスで起こるものとは、少々状況が違います。
ここでは、飛行機のエコノミークラスではなく、車中泊で発症するエコノミークラス症候群にスポットを当て、より安全に車中泊をするにはどうすればいいか、その対策を徹底解説します。
エコノミークラス症候群を特に注意しなければいけない人
エコノミークラス症候群は、一言で言えば循環器の病気です。簡単にいうと、血の流れが悪くなって血の塊ができてしまい、それが肺の動脈に詰まってしまうことによって起こる病気で、「急性肺血栓塞栓症」ともいいます。
肺の血管が詰まるために窒息状態になり、エコノミークラス症候群によって症状が出た場合、死亡率14%,ショックを伴う重症例が30%という報告があります。
今回の熊本地震では地震発生から一週間ほどで、エコノミークラス症候群と診断された患者はなんと35人もいました。
その内訳は、65歳未満が14人、65歳以上が21人と、高齢者に多く見られました。そのうち11人がなくなり、特筆すべきは9人が女性でした。
つまり、エコノミー症候群で死亡した8割は女性だということです。
循環器系の病気であるから、循環機能が衰えている高齢者に多く発症するのは分かるのですが、ではなぜ女性のほうがより多く発症するのでしょうか。
それは、女性ホルモンの影響で、女性のほうが男性に比べて血液凝固が起こりやすく、それゆえ血栓が出来やすいためだと言われています。
よって高齢の女性が車中泊を余儀なくされる場合は、その高齢女性が一番快適に寝れるような工夫をしてあげることが大切です。
その他にも、エコノミークラス症候群を発症しやすい人として、以下の様な人がいます。
(1)高齢者、(2)下肢静脈瘤、(3)下肢の手術、(4)骨折等のけが、(5)悪性腫瘍(がん)、(6)過去に深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞等を起こした事がある、(7)肥満、(8)経口避妊薬(ピル)を使用、(9)妊娠中または出産直後、(10)生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症等)がある等の方は特に注意が必要です。
車中泊で死なないためのセッティング
同じエコノミークラス症候群ではあるけども、飛行機の場合と車の場合とでは、その対策も違ってきます。
エコノミークラス症候群の観点から見た車の最大の特徴は、その独特なシートの形状でしょう。
飛行機のシートの場合は、いくら窮屈といえども、ある程度、そのシートで寝て休むことも考慮に入れたデザインがなされていますが、自動車のシートだと、殆どの場合において上体を起こして運転をするのにより疲れないようなデザインがなされています。
つまり、シートは倒れるけども、倒したシートで快適に寝ることはほとんど考慮されていないのであり、飛行機のエコノミークラスよりも、より過酷な状況なのです。
だからこそ、よりエコノミークラス症候群にならないためのシートのセッティングを工夫することで、エコノミー症候群の発症を、グンと下げることができるでしょう。
では車中泊でエコノミークラス症候群を発症しないためのセッティング方法を見ていきましょう。
車内で体をまっすぐにすることができるような空間づくり
自動車のシートは、運転しやすい姿勢になるように、自然と上体が起こるような姿勢になります。
上半身が起きるのは飛行機のシートと同じですが、車のシートの場合、膝の高さよりもおしりが下に沈み込むような位置関係になります。
そうしたシートのデザインであるために、たとえリクライニングをしてシートを倒しても、おしりの部分は沈み込んだままで、体を反った状態で横になるような姿勢になってしまいます。
状態が沿った形で横になれば、寝返りをうつことも難しく、横になっているだけでも苦しいでしょうし、血液の流れも阻害されかねません。
よっておしりが沈み込む部分に、タオルや衣類などを挟むことで、おしりだけが沈み込まないようにすることで、すこしでも横になった姿勢が真直ぐになるように工夫をしましょう。

シートを倒す前に後ろの座席を整理しよう
車のシートは出来る限り倒せるだけ倒しましょう。
その際、前の座席を倒した時に、後ろの座席の足元に荷物が置いてあるために、シートを最後まで倒しきれないままになってしまう、なんてことがないように、シートを倒す前に、後ろの座席を整理して、前のシートが100%倒れるようにしましょう。
シートを出来る限り後ろに下げる
シートを倒すのは普通にするのですが、意外と忘れがちなのが、シートを後ろに下げることです。シートを後ろに下げることで、足がめいいっぱい伸ばせるようになります。
シートを前後に動かすレバーは、車によって場所は違いますが、たいていシートの下の方にあります。かならずシートは後ろの方に移動させて、足がめいいっぱい伸ばせるような体制にできるようにしましょう。
車中での服装や体の状態について
エコノミークラス症候群の切り札として、着圧ソックスが取り沙汰されています。
弾性ソックス、着圧ストッキングとも言われているものですが、靴下などと違い、ふくらはぎのあたりを締め付ける目的なので、足の先などは、穴が開いていて、足の指が出るようになっている物もあります。
たしかに血栓防止のためには、大変有用なグッズではありますが、ほとんどの人は、車中泊になってしまうような状況を想定して、着圧ソックスを用意しておくことなんて無いでしょう。
また、着圧ソックスというのは非常に特殊なものであるから、簡単に手に入るものでもありません。
着圧ソックスがあればそれに越したことはありませんし、あるならそれを着用しましょう。
しかし殆どの人にとって、着圧ソックスはあまり現実的な方法ではありません。ここでは着圧ソックス以外でできる車中泊の際の服装や姿勢について解説します。
体を締め付けない服装を心がける
体を締め付ける服装はだめで、なぜ足を締め付ける着圧ソックスはいいのでしょうか?
実は血栓を防止するために足を圧迫する際は、ゆるすぎても意味ないし、かといって圧迫しすぎてもかえって血の巡りが悪くなってしまいます。圧着ソックスは、血栓を防止できる、ちょうどいい圧迫具合で足を締め付けるように作られているのです。
よって、圧着ソックスがない場合は、他のもので代用して足を圧迫はしてはいけません。
基本的に車中泊の際は、頭の天辺からつま先まで、体を締め付けない服装にならなければいけません。
- 靴は脱ぐ
- ベルト/ズボンのボタンを外す
- 襟元のボタンをはずして緩める
- ジーパンは脱ぐ
- 上着はなるべく脱ぎ、寒ければ上から羽織るようにする
車内での姿勢について
ダッシュボードに足を乗っける?
車内での姿勢に関してですが、もし無理のない姿勢になるのであれば、足をダッシュボードの上に乗せるのも、血栓を防ぐのに大変有効です。
しかし、車の大きさや、その人の体型によっては、ダッシュボードに足を乗っけるほうが、かえって苦しくなってしまう場合もあるかもしれません。その場合はもちろん無理をするのはやめて、できるかぎり自分が楽だと思える姿勢をとりましょう。
足元にはフットレスト、あるいはそれにかわる足の置き場をつくる
足をダッシュボードの下に置く場合、なにもないと、足がダランとして、膝は急な角度で曲がったままの姿勢となってしまいます。血栓が出来やすいのはヒザ下、ふくらはぎなので、まさにその部分の血液の流れが悪くなってしまうのです。
よって、足元が少しでも高くなって、膝が曲がらないような姿勢を取れるように、足元にフットレスト、あるいはそれにかわるものを置いて、足の置き場を作りましょう。
理想は下記のような状態です。
足を組まない
寝るときは、絶対に足を組まないようにしましょう。
首を座らせる
首がすわるように、首の周りを固定しましょう。
一番いいのは首枕ですが、なかなか首枕の持ち合わせもないかもしれませんでしょうが、その場合は、タオルや衣類などでも充分代用できるので、首に巻いて、首を固定しましょう。
車中泊をする前や、寝ている間にしたいこと
体操やマッサージをする
車の中で寝る前に、外で体を動かしたり、ふくらはぎをマッサージして、血液が流れやすい状態にしておきましょう。
貧乏ゆすりも血栓を防止するのに、非常に有効です。
水分を摂る
血栓ができる原因の一つに、水分の不足もあります。車中泊の際は、水分を積極的に取るようにしましょう。
睡眠薬やお酒は飲まない
なれない車内で寝なければならないとなれば、睡眠薬などに頼りたくなる人もいるかもしれません。しかし、車中泊において、睡眠薬を飲むのは自殺行為だと思って下さい。
なぜなら、睡眠薬を飲むと、薬がきいている間は起きないために、たとえ体が苦しい状態になっても、その苦しいままで眠り続けてしまい、不意に体にへんな負担をかけかねないためです。
それはお酒を飲む場合も同じです。寝つきやすくするために、少しのお酒であれば良いのですが、泥酔してしまうまでに飲むのは絶対にNGです。
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