だれもが耳の中をきれいにするために、清潔に保つために耳かきなどの耳掃除をしていることでしょう。しかし、耳掃除は不要だというのが一般的になりつつあります。というのも耳掃除を熱心にするせいで、かえって耳垢をためてしまい、外耳炎をこじらせる人がいることもあるからです。
耳掃除は必要?耳掃除は不要?と問われれば、必要です。しかしアメリカでは耳掃除をやめるように耳鼻科協会が一般の人たちに警告を発しています。
耳掃除の何がいけないのでしょうか。耳掃除をどうすればいいのでしょうか?
熱心な耳掃除のせいで耳垢がたまって外耳炎に!
ある日、子供が耳が痛いというので、菌が鼓膜に入ってしまう中耳炎になってしまったのかもと、翌日耳鼻科に連れて行きました。そこで先生は驚くべきことを言いました。
「耳垢のたまりすぎです」
一瞬、ポカーンとなりました。というのも、子供の耳を清潔に保つために、ほぼ毎日、綿棒で耳掃除をしてあげていたからです。
耳垢はかなりかたく鼓膜にこびりついていたために、その日は耳垢を溶かす薬を垂らしていったん家に帰されました。耳垢が柔らかくなるまで時間がかかるからです。数日して再び耳鼻科に行くと、耳垢は柔らかくなっていたので、無事に鼓膜にこびりついていた耳垢の塊を取り除くことができました。
毎日耳掃除をしていたのに、なぜ耳垢がたまってしまっていたのでしょう?
先生曰く「綿棒で耳掃除をすると、かえって耳垢を耳の奥に押し込んでしまって、耳垢をためてしまうことがよくあるんです。」
多くの人は、耳掃除のために綿棒を耳の中に入れ、くるくると回すことでしょう。それにより、綿棒の届く部分の耳垢は取り除けますが、綿棒の一番先端の部分から先の耳垢は、取り除けないばかりか、綿棒によって耳垢が耳の奥に押し込んでしまうことになります。そして回数を重ねるごとにそれがたまって、鼓膜などにへばりついて鼓膜をふさいでしまうのです。
耳掃除をしたせいで、かえって耳垢をためてしまい、耳鼻科に駆け込む人は、意外と多いのです。
耳掃除は実は非常に危険な行為
「肘より小さいものを耳に入れるな」という英語のことわざがあるように、国によっては耳掃除はやってはいけないこととされています。なぜなら、耳掃除は非常に危険を伴うからです。
そもそも人間の体は耳掃除の必要がないようにできています。耳垢は自然と排泄されるからです。耳の中は非常に狭くて複雑でデリケートなので、一度損傷したら、ほぼ元に戻すことができないのです。
耳掃除のやり方を間違えると、逆に耳垢を耳の奥に押し込んでしまったり、外耳道を傷つけて炎症を起こしてしまったり、手元がくるって、綿棒で鼓膜を破ってしまう、なんて事故も後を絶ちません。
耳掃除なんて非常に身近なことですが、一瞬の失敗で一生聴覚を失ってしまう、なんてことが起こりかねないのです。
耳掃除における事故に関しては、国民生活センターも注意喚起をしています。
国民生活センターには、2010年度以降の約5年間に、耳掃除中に耳に危害を負ったという事故情報が178件(注)寄せられており(2015年12月末日までの登録分)、入院を要する大けがを負った事例も見られます。油断しないで!耳掃除-思わぬ事故につながることも-
米国では耳かきを禁止を呼び掛けている
アメリカでは、アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が耳ケアの新ガイドラインを発表しました。その中で、ほとんどの人は耳掃除の必要がないとし、耳掃除をすればかえって耳垢がたまってしまい、「耳垢栓塞」になるということで、警告を発しています。
日本人は体質的に耳掃除が必要ない
本来、耳は掃除の必要がないようにできているうえに、さらに日本人は欧米人以上に耳掃除の必要がない体質だといわれています。
耳の構造ははじめから耳垢を外に押し出すように作られています。たとえば皮膚は鼓膜から耳の入り口、外に向かって皮膚が移動するようになっていて、さらに耳毛は外に向かって生えているために、ごみなどは中から外には出やすいけれども、外から中に入りにくいという、逆さまな蟻地獄のようになっています。
そのため、そもそも人間の耳の構造からして、耳垢が耳の中にたまりにくいようになっているのですが、さらに日本人の体質として、西洋人の場合は耳垢がしっとりしている一方、日本人の場合は9割がカサカサの「乾性耳垢」なので、耳をふさいでしまうほど、耳垢がたまるようなことは、非常にまれだと言われています。
耳垢は耳の健康維持に必要なもの
そもそも耳垢とは何でしょう。耳垢は、新陳代謝によって剥がれ落ちた皮膚や、耳の中に入ってきた埃やごみが耳垢腺から出てきた分泌液と混ざって固まったものです。それだけを聞くと、やはり、耳垢は体の垢と同じで、掃除が必要なのではと思うかもしれません。
しかし、耳の健康を保つためには耳垢が耳の中にあることも必要なのです。
耳垢の大事な機能とは次の通り
- 耳の薄い皮膚を保護している
- 耳垢の抗菌作用で耳の中の雑菌の繁殖を防ぐ
- 小さなゴミやホコリをキャッチして異物の侵入を防ぐ
耳掃除の目的は性感帯刺激の気持ちよさだった?
鼻くそを毎日ほじる人は、あまりいないと思いますが、綿棒や耳かきを利用して耳掃除を毎日の日課にしている人は結構いると思います。
耳の中はそんなにすぐに垢がたまりやすいのでしょうか?
耳掃除を毎日する理由は、耳の中を清潔にするという大義名分で、実は性器を刺激するのと同じ快感を味わうためだったのです。
耳の中の綿棒が届く範囲である外耳道には、 アポクリン腺があります。このアポクリン腺がある体の部分とは、ワキ、乳首周辺、性器の周辺、へその周り、そして耳の中です。言い換えれば、アポクリン腺があるのは、いわゆる性感帯と呼ばれる部分です。
性感帯を刺激して快感を感じるのは、アポクリン腺の中にある迷走神経が刺激されるためだといわれています。
つまり、耳の中を綿棒でくるくると刺激することで、掃除による爽快感とは別の、性的な快感を得ていたのです。
耳はそんなにやたらめったら垢がすぐにたまるようなところではないので、きれいにすることが目的だったら、そんなに頻繁に掃除する必要は全くないのです。
動画で納得!やっぱり耳掃除は必要
耳掃除は不要どころか危険だ、というのが今の耳鼻科の医者たちの間での共通見解になりつつあります。
しかし、それでもやはり、耳掃除は必要だという医者も根強くいます。というのも、実際の現場の医療に携わる医者たちは、耳掃除をしないせいで、耳垢がたまってしまう患者を何度も目の当たりにしているからです。

この映像を見れば、いくら耳掃除が必要ないという人でも、その意見を変えるでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=eFJ66UK3x10
https://www.youtube.com/watch?v=TiSkC6xWSMc
老人介護の現場に携わる人であれば、経験ある人も多いかもしれませんが、たとえば耳掃除をまったくしない痴ほう症の老人なんかは、耳掃除をしないために、耳垢が大量にたまって耳の穴をふさいでしまうことがしばしばあります。
耳掃除をするために、耳垢をためてしまうこともありますが、耳掃除をしないために耳垢がたまってしまうという、逆のパターンもあるのです。
耳掃除はするべきだけど正しい方法で
では、耳掃除はどのようにやればいいのでしょうか?正しい耳掃除の方法とはどのようなものでしょうか。
一番いいのは、耳鼻科に行って先生に耳掃除をしてもらうのが、一番間違いありませんが、なかなか耳掃除で耳鼻科に行くという余裕がある人もなかなかいないでしょう。
あまりお勧めはできませんが、自分でやるとすれば、まず頻度としては、最短でも一か月に一回、通常は三か月に一度で充分です。
そして耳掃除のやり方としては、耳垢が発生しない奥のほう(骨部)まで綿棒や耳かきをつっこまず、出入口付近のみ簡単に掃除をするという方法がいいでしょう。
具体的には外耳の耳垢が発生する部分のみで、それは耳の入り口から1.5cm程度の深さです。
それ以上の場所では耳垢は発生しませんし、鼓膜を破いてしまう危険性がありますので、1.5cm以上綿棒を突っ込むのはやめましょう。
耳掃除をやるときには、かならず周囲に気を付けましょう。耳掃除中に、そのことを知らない人が、ぶつかってきて、綿棒で耳を突いてしまったなんて事故が起こらぬよう、周囲に人がいないところ、人が近づけないところで、周囲の安全を確保したうえで、耳掃除をしましょう。
子供に耳掃除をやらせるのはやめましょう。お子さんが見よう見まねで親の耳に綿棒をいれて鼓膜を破った・・・なんていう事が実際にありました。
まとめ
耳掃除は不要といういのは、間違いです。耳に自浄作用があったとしても、それでも耳垢がたまってしまい、それが原因で耳をふさいでしまうこともあります。
そうなれば耳掃除はしなければなりません。しかし、耳掃除は自分でやるのではなく、できれば医者などの専門医にやってもらうのがいいでしょう。
耳掃除が必要だといっても、耳掃除は三か月に一回程度で十分です。頻繁な耳掃除によって、かえって耳垢がたまってしまったり、自分で見えない部分である耳の中の耳掃除をしたばっかりに、外耳に傷をつけてしまったり、鼓膜を破いてしまったりする事故も後を絶ちません。
耳掃除は身近なことですが、その事故による被害も深刻なものです。細心の注意を払って行いたいものです。