アルミ製食器は危険だという話を聞いたことがありませんか?ヨーロッパではアルミ製食器が禁止されているとか、アルミが溶けて人体に入るとアルツハイマーになるとか。
そういわれてみると、アルミ製食器って少ないような気がしますが、調理器具とかにはアルミ製品は普通にありますし、そもそも、お料理にはアルミホイルが普通に使われます。缶詰も本体は鉄を使用していますが、実は蓋にはアルミが使われています。コーラやビールはアルミ缶ですし、よくよく考えてみれば、家庭で使うものにはアルミだらけ。
もしアルミが本当に危険だというのであれば、なぜいまだにアルミが氾濫しているのでしょうか?それともアルミが有害だというのは嘘だったのでしょうか?
アルミはアルツハイマーの原因ではないとはいえない?
現在では、アルミはアルツハイマーの原因ではないという説が主流であるものの、完全に否定されたわけではありません。日本でアルミがアルツハイマーの原因であるという説が広まったのは1996年の新聞の報道からでした。
しかしながらその後、アルミニウムの業界団体はもとより、アメリカ食品医薬局もアルミニウムがアルツハイマーの原因であることを否定していることから、アルミがアルツハイマーの原因ではないという説が主流になりました。よってアルミ製品はごく普通に家庭用調理器具に使われ、普及しています。
ところが最近になって再びアルミがアルツハイマーの原因ではないかという説がぶり返しているのです。2017年7月6日に朝日新聞が再びアルツハイマーの原因はアルミではないかという論文が相次いで発表されていると報道し、関係者に衝撃を与えました。
この論文の中で紹介されているグラフを見る限り、確かにアルツハイマー患者の脳から比例的に高濃度のアルミが検出されています。
しかしながら、アルミ製品は私たちの生活に広く深く浸透しているにもかかわらず、全ての人がアルツハイマーになっているわけではないことからも、アルミをアルツハイマーの原因だとしてしまうことには無理がありますが、少なくとも、何かしら関係があることは事実でしょう。
この結果だけだと、アルツハイマーになったからアルミが蓄積されやすくなっているのかもしれませんし、必ずしもアルミがアルツハイマーの原因だとは特定できませんが、こうした状況でも、まだ私たちはアルミ製品を日常において使用しても大丈夫なのでしょうか?
溶け出るアルミは有害だけどほぼ安全?
アルミがアルツハイマーの原因なのかどうかは別として、確かにアルミは人体に有害なのは事実です。これは厚生労働省のアルミの情報でも確認することができますが、ラットに大量のアルミニウムを投与した際に、腎臓や膀胱への影響や握力の低下などが現れたといいます。ただしこれは、あくまでも多量に投与した場合であって、体重1kg、一週間当たり、2mgであれば、一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される許容量だといいます。
つまり、乱暴に言えば1円が1mgなので、毎週2円を溶かして液体として飲んでも大丈夫だと言うことになります。
食器から溶けるアルミ、鍋から溶けて人体に入るアルミの量が1週間の合計で2円分になることはほぼ不可能です。つまり、理論上では、健康被害を出すために、毎日毎時間、無理やりアルミ製の調理器具を使ってアルミ製食器で食事をしても、それでも健康被害を出すことはできないわけです。
だから安全だというつもりはありませんが、少なくともアルミの食器や調理器具による健康被害は現実的には考えられないレベルです。
つまり、アルミは健康被害が生じるというのは嘘ではないけども、現実的には考えられないという意味では、本当とは言えないのです。
ヨーロッパでアルミ製調理器具は規制されているというのはウソ
インターネット上のアルミニウム調理器具の危険性を訴える記事には、決まってその根拠の一つとして、ヨーロッパではアルミニウム調理器具の危険性のために、販売が規制されていると紹介しています。
西独、仏、英、スイスでは販売規制がされています。
①水を沸かすと悪性酸化水素が発生、
②卵をゆでると悪性リン酸塩を生成、
③肉料理で悪性アルミ塩化物が発生、
④ベーコン調理で強麻酔性の酸が発生。
⑤アルミは酸性症、赤血球激減、貧血症状を起こす。
この衝撃レポートを受けて、当時、西ドイツ、フランス、ベルギー、イギリス、スイス、ハンガリー、ブラジルなどでアルミニウム調理器具の販売は規制されたのです。
多くのインターネットで言及されているヨーロッパでのアルミニウム調理器具の販売規制の根拠となっているのは、船瀬俊介さんが書かれた「知ってはいけない」(徳間書店)という本の中の記述が根拠となっているようです。
しかしながら、すくなくとも2018年3月の時点でドイツ、スイス、イギリス、フランスのいずれの国も、アルミ製調理器具の販売規制をしているという事実はありません。
それどころか、ドイツの政府機関である連邦リスク評価研究所(Das Bundesinstitut für Risikobewertung (BfR))では、アルミニウム調理器具の使用によって健康被害を受けることは一切ないという研究報告書を出しています。
そして論より証拠、ドイツのアマゾンでも、ドイツ製のアルミ製調理器具を購入することができます。
[blogcard url=”https://www.amazon.de/s/ref=nb_sb_noss/260-8581513-9160304?__mk_de_DE=%C3%85M%C3%85%C5%BD%C3%95%C3%91&url=search-alias%3Daps&field-keywords=alminium+cookware”]現在、ヨーロッパでアルミニウム調理器具が販売規制をしているとした根拠について、船瀬俊介氏に問合せしているものの、今のところ返事はありません。返事がどうであれ、今現在、アルミニウム調理器具が販売規制されているという事実はないことには変わりません。
ヨーロッパでアルミニウム調理器具が販売規制をしているというのは、インターネット上で独り歩きしたデマにすぎないのです。
そもそもすでに身の回りはアルミ製品だらけ
どうしても口に入るもの全てからアルミを排除したいというのは、今現在の日本ではほぼ不可能ではないかと思うほど、あらゆるものに、アルミ製品が浸透しています。
食器はもちろん、アルミホイル、ジュースやビールはアルミ缶、レトルト食品のパックだってアルミ箔が使用されています。家庭からアルミを排除したとしても、レストランの厨房に行けば、アルミ製調理器具が多く使われていますし、食品工場でもアルミ製の機械が動いています。
アルミホイルに直接食べ物を包んで、それを火にかけるアルミホイル焼きという料理法だって、フランス料理でも、イタリア料理でもありますし、アルミホイルは全世界で普通に使われています。
もし食品関係からアルミに触れるものを排除した生活を送るとなれば、畑になった野菜をもぎ取って直接食べる、木の実を摘んでそのまま食べる、動物を解体して焚火で焼く、そんな生活をしなければならないでしょう。それほど、私たちのありとあらゆるところにアルミ製品は浸透しています。
これだけたくさんのアルミ製品に囲まれた生活をしているはずの日本人であっても、何事もなく健康に天寿を全うする人もたくさんいます。
アルミが健康被害を起こすというのは、杞憂にすぎないのではないでしょうか。
まとめ
アルミがアルツハイマーの原因ではないかということに関しては、世界中の学者のほとんどが否定的な見解であるものの、その可能性も捨てきれないでいるという状況です。
もしアルツハイマーの原因であるとしても、日常におけるアルミ製調理器具の使用で健康被害が起こるような状況になることはまずありえません。
アルミ製調理器具の危険性を訴えるインターネット上の記事では、ヨーロッパではアルミ製調理器具の販売が規制されているのに、日本ではアルミ製調理器具の危険性をマスコミが隠蔽し、アルミ製調理器具の販売を野放しにしているというようなことが書かれていますが、それは全くのでたらめで、現在世界中のどの国でもアルミ製調理器具の販売を、健康被害を理由に販売を規制している国は一つもありません。
アルミ製調理器具は、プロの厨房でも積極的に使われているほど、おいしい料理を作るのに、たいへん優秀な性能を発揮しています。もちろん、アルミ特有の性質もあって、アルミが適さない場面もありますので、アルミ製の調理器具の特性をよく調べて、使いましょう。