脳みそがゆで卵状態になる!
夏になると、熱中症のことを騒ぎすぎるなぁ、なんて思ったことはありませんか?たかが暑いくらいで、そんなに騒ぐこともないのに、と考えているようであれば、それは大きな間違いです。
熱中症の症状は、体が熱くなることなんだから、涼しいところで身体を冷やせば治るでしょ?なんて考えている人は、この有名なつぶやきを耳にすれば、その考えは180度改まるでしょう。
あなたはゆで卵を生卵に戻せますか?熱中症というのは脳のたんぱく質がそうなることだ
誰が言ったかわかりませんが、熱中症の怖さを簡潔に言い表した名言です。ゆで卵なだけに「きみがわるい」セリフで、一度聞いたら怖くなって、身体が熱くならないように一生懸命になることでしょう。
しかし、こんなのはデタラメだという人もいます。
化学的に考えるとそんなことはあり得ない?
化学的な根拠を持ち出して、脳みそがゆで卵のような状態になるはずがないと主張する人たちがいます。
その人たちの言い分はこうです。
脳みその構成成分は60%が脂質で40%がタンパク質。ゆで卵の成分と似ているけども、しかしゆで卵になる部分のタンパク質は、60℃になって初めて変質を開始します。
いくら猛暑といえども、日本において外気が60℃に到達するようなことはあり得ないので、脳みそがゆで卵のように固まってしまうなんてことは、ありえないというわけです。
熱中症を放置して死亡してもそのまま放置していれば、体が過熱されて体温が60度を超えて、たんぱく質が変性することはあり得るかもしれませんが、ゆで卵状態になるというのは、あまりにも大げさで適切なたとえだとは言えないというのです。
なるほど、やっぱり脳みそがゆで卵になるなんて、机上の空論だったのでしょうか。
実際は40度でも危険な状態になる
たんぱく質の変性は60度からだから、脳がゆで卵化するはずがない、というのは、一見すると科学的な説明に見えますが、医療の現場ではそれどころか、もっと危険な状況が浮かび上がってきます。
横浜相原病院(神奈川県横浜市)の吉田勝明院長によれば、熱中症によって緊急搬送で担ぎ込まれてくる患者の多くは、点滴で水分とミネラルを補給することで改善に向かうものの、まれに重度の熱中症の患者がいて、その中には「臓器がゆで卵の白身のように固まって機能が低下している人」もいて、そのまま多臓器不全で亡くなったり、助かっても手足が動かなくなったり、記憶力が低下する後遺症が残る人もいるといいます。
確かに脳みそまでゆで卵状態になることはほぼないものの、臓器は体温が40度を超えた時点で、不可逆的な障害、つまり一生治ることのない後遺症となるようなダメージを受けるのです。
タンパク質は60℃まで変質することはないかもしれませんが、人間の臓器の中にはわずか40℃で可逆的に変質する成分もあるわけです。
「脳みそ=ゆで卵=タンパク質」としてだけで考えたときは、高温のリミットは60℃かもしれませんが、人間の体はタンパク質以外にもいろいろな成分によって成り立っていますので、高温状態になることの危険性に関して、改めて注意を向けるべきでしょう。
まとめ
脳みそをゆで卵に例えての熱中症への警告は、あまりにも滑稽で、そのたとえは大げさだと笑う人もいますが、実際は大げさでもなんでもなかったのです。
確かに脳みそがゆで卵になるような状況はほとんどないかもしれません。しかし、脳みそ以外の臓器は、わずか40度を超えた時点で、一生治ることのない損傷を受けるのです。
熱中症の怖いところは、体内に異変が起きたときは、すでに手遅れで一生涯に渡って後遺症に苦しむことになることもあるというところです。
今、地球全体がどんどん温暖化しているために、夏の気温が上昇しているといいます。今までのように夏の暑さを我慢できるような状況ではありませんので、夏になったらゆで卵の話を思い出し、必要以上に体が熱くならないように、熱中症にならないように自衛しましょう。